DNAR指示に関するワーキンググループの成果報告

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活動のお知らせ

DNAR指示に関するワーキンググループの成果報告

日本臨床倫理学会 総務担当理事 箕岡真子

蘇生不要指示・DNAR指示(Do Not Attempt Resuscitation)は、日常的に日本中の多くの病院で出されていますが、「DNAR」という言葉をアメリカから輸入したに過ぎず、「コンセンサスがない」というのが臨床現場の実情でした。実際、DNARのとらえ方が、医療者個人個人で異なっており、DNAR指示によってCPR以外の他の治療に対しても消極的になり、生命維持治療も制限されてしまい、実質的な延命治療の差し控え・中止となってしまっている場合さえあります。しかし、それは「DNARだから・・・」、ということで十分に議論されず、DNARという言葉だけが一人歩きをしてしまっている現状がありました。
そこで、日本臨床倫理学会は、このような混乱したDNAR指示の現状を改善するという目的のもと、2014年1月に「DNAR指示に関するワーキンググループ」を発足させ、話し合いを重ねてまいりました。このたび作成指針を皆様に発表できるのも、ワーキンググループのメンバーの熱心な議論と、オブザーバーの皆様のご助言のたまものだと思っております。
また、「生命を脅かす疾患」に直面している患者においては、CPR以外の他の医療処置の内容についても、具体的に十分に考慮する必要があるという趣旨のもと、日本臨床倫理学会の本指針は、CPRについてだけでなく、他の医療処置に関する具体的指示も含んだPOLST=Physician Orders for Life Sustaining Treatmentという形式を採用することにしました。
実際、それぞれの医療機関の状況により、必要とされる書式・指針は微妙に異なってくるとは思いますが、日本臨床倫理学会版のPOLST(DNAR指示を含む)作成指針は、【基本姿勢】【ガイダンス】【書式】を通じて、日本中の医療機関で使用することができる基本的枠組みは示すことができたと思います。細部は、各医療機関の事情に応じて、改変・追加するなりしていただくことは可能です。実際、まだまだ、今後の課題も山積しております。たとえば、救急隊への具体的指示(*)や、介護施設や在宅における看取りに際してのPOLST(DNAR指示を含む)の普及活動については、今後の課題です。
日本臨床倫理学会版のPOLST(DNAR指示を含む)作成指針が、今後、適切に使用され、臨床現場における倫理的な医療実践につながることを心から願っています。したがって、今後も、本ワーキンググループは引き続き、本学会内外において、本指針の利用状況を見ながら、忌憚のない意見を聴取することで、評価・改訂を続けていく予定です。引き続き、皆様のご助言・ご意見をお願いする次第です。*救急隊への指示については、本書式では一般的なものを記載してありますので、現時点では各地区の事情に応じて、所属地区の救急隊と話し合いをもち、合意を得て記載してください。

内容はこちら


日本版POLST(DNAR指示を含む)作成指針

DNAR(POLST)指示に関するワーキンググループ発足について

日本臨床倫理学会

本学会では、わが国における医療機関で使用可能なDNAR(POLST)の適切な書式を作成すること等を目的とした「DNAR(POLST)指示に関するワーキンググループ」を設置いたしました。本ワーキンググループの発足にあたり、メンバー構成を10名とし、5名は理事会推薦・5名は公募としました。その結果、多数の応募をいただき、下記のとおり、10名のメンバーと26名のオブザーバーという構成でスタートすることとなりました。まだ誕生したばかりのワーキンググループでございますので、今後さまざまな問題に直面していくことと存じます。会員各位のより一層のご助言・ご協力・ご支援の程をお願い申し上げます。

趣旨

蘇生不要指示・DNAR指示(Do Not Attempt Resuscitation)は、日常的に日本中の多くの病院で出されていますが、「DNAR」という言葉をアメリカから輸入したに過ぎず、「コンセンサスがない」というのが臨床現場の実情です。実際、DNARのとらえ方が、医療者個人個人で異なっており、DNAR指示によってCPR以外の他の治療に対しても消極的になり、生命維持治療も制限されてしまい、実質的な延命治療の差し控え・中止となってしまっている場合さえあります。しかし、それは「DNARだから・・・」、ということで十分に議論されず、DNARという言葉だけが一人歩きをしてしまっている現状があります。
そこで、CPRだけでなく、他の生命維持治療に関する具体的指示も必要ということになり、「POLST=Physician Order for Life Sustaining Treatment」という新しい概念が出てまいりました。(詳細は学会誌「臨床倫理」2号掲載予定参照)
また、将来は、在宅や施設の看取りにおいても、DNAR指示は必要になると考えられます。現在、DNAR指示は、急性期病院を中心に実践されていますが、心肺停止(CPA)の状態になっても、そのまま蘇生処置をしない(=看取る)ということは、在宅や施設においても必要とされる指示です。今後は、増加が予想される在宅医療や介護施設の看取りにおいても、終末期医療ケアの「意思決定の手続き」を密室・独断にしないためにも、DNAR指示は熟慮を要する課題だと考えられます。
これらを基に本学会では、日本各地の医療機関で使用可能なPOLSTの適切な書式を作成すべくDNAR(POLST)指示に関するワーキンググループを組織する次第です。

メンバー・オブザーバー一覧(敬称略・五十音順)

メンバー(10名)
稲葉 一人 中京大学法科大学院
佐藤  労 藤田保健衛生大学 医学部 倫理学
相馬 孝博 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院
馬場 葉子 横浜労災病院 集中治療室看護師
濱邊 祐一 東京都立墨東病院 救命救急センター
松本 武敏 にしくまもと病院
箕岡 真子 東京大学大学院 医学系研究科医療倫理学分野・箕岡医院
三浦 靖彦 医療法人財団 慈生会 野村病院
宮本 顕二 北海道大学大学院 保健科学研究院
山田 陽介 東京都保健医療公社 豊島病院
オブザーバー(26名)
赤沼 康弘 赤沼法律事務所
井澤 陽子 枚方総合発達医療センタ- 看護部
飯島 祥彦 名古屋大学医学部 生命倫理委員会
伊藤 美和 名古屋掖済会病院 救命救急センター 
荻野美恵子 北里大学医学部神経内科学
海津未希子 東京大学医学部附属病院 緩和ケアチーム(がん看護専門看護師)
梶原 絢子 自治医科大学附属さいたま医療センター 看護部
兼児 敏浩 三重大学医学部付属病院 医療安全・感染管理学部 
川西  譲 阪神合同法律事務所 
黒木 基夫 いぐさクリニック
佐藤 敏子 横浜創英大学 看護学部看護学科 高齢者看護学
佐野さちよ (社福)康和会 久我山病院 
清水 直美 千葉市あんしんケアセンター磯辺
鈴木はるみ 東京女子医科大学病院
田尻 和子 田尻法律事務所
田中信一郎 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター 
長尾 和宏 長尾クリニック 日本尊厳死協会副理事長
西田 伸一 西田医院
根井 朝美 関東労災病院 産婦人科 
羽金 和彦 独立行政法人国立病院機構 栃木医療センター 
人見 雅子 岡山大学病院 病院長室 
福本 和央 Sアミーユ小平仲町
藤田 伸輔 千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部
水澤 久恵 西武文理大学 看護学部看護学科 
保田 裕子 岡山大学病院 看護部 移植コーディネーター 
矢野 正雄 南町田病院