「ブリタニー・メイナード」のケース
(2014.11.19)

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4.「安楽死」と「患者本人の意思で延命治療をしないこと」の違い

(1)「安楽死」と「延命治療」
①『患者意思によって延命治療をしないこと』
延命治療がもはや無益と判断された場合、患者が最期のときまで、‘自分らしく’尊厳をもって生きるために、本人意思(自己決定)を尊重し、「延命治療をやめて病状を自然の状態に戻す」ことを指します。
②積極的安楽死Active Euthanasia
積極的安楽死は、患者の命を終わらせる目的で「何かをする」ことです。
さらに積極的安楽死は、ⅰ)自発的安楽死(Voluntary Euthanasia);意思能力を備えた成人が自らの意思で死を望んでいる場合 ⅱ)非自発的安楽死(Non-voluntary Euthanasia);重度障害新生児など、本人に判断能力がなく意向を表明できない場合 ⅲ)反自発的安楽死(Involuntary Euthanasia);意思能力を備えた本人の意向に反する場合、に区別されます。このような医師が自ら手を下して患者を死に至らしめる「積極的安楽死」は、日本の東海大学事件で「積極的安楽死の4要件」が示されていますが、倫理的には、許容されるものではないと考えられます。
③消極的安楽死 Passive Euthanasia
消極的安楽死は、患者の命を終わらせる目的で「何か(治療)をしない」ことです。積極的安楽死と同様①自発的安楽死 ②非自発的安楽死 ③反自発的安楽死に区別されます。また消極的安楽死は後述の理由で、「患者本人の意思で延命治療をしないこと」とは異なると考えられています。
(2)『患者の意思で延命治療をしないこと(差し控え・中止)』と、『消極的安楽死』との違い
ⅰ)行為者の意図が異なる
『患者本人の意思で延命治療をしないこと』と、『消極的安楽死』とは、行為者である医師の「意図」が異なるといえます。すなわち、患者の命を終わらせようとする意図や目的がある場合は「安楽死」であり、それに対して、患者本人に延命治療拒否の(事前)意思があり、その意思を尊重しよう、患者の苦痛を除いてあげようという意図・目的の下に延命治療を中止・差し控えるのが『患者の意思で延命治療をしないこと』です。患者の‘命’を終わらせる目的ではないので、消極的安楽死とは異なる概念であると考えられます。
ⅱ)最期まで緩和ケアを継続する
したがって、『患者本人の意思で延命治療をしないこと』においては、無益な延命治療は中止したり差し控えたりしますが、その患者が生きている限りは、緩和ケアのコンセプトの下に、十分な心のこもった快適ケアは提供されることになりますし、疼痛緩和のために必要な治療も提供されます。